Tricky Guy 予測不能

神谷 幸弥(さや)

2019-03-08
疑似恋愛
0 COMMENTS
私の中でMの存在が大きくなってきたのは、彼が既婚者だからなのか、それとも純粋に惹かれているのか自問自答を繰り返していた。いつの間にか意識を手放したようで、気が付けばベッドの上に寝ていた。病室らしからぬ部屋の内装に自分のいる場所が把握出来なかった。

あれ? ここ何処だろ・・・?

辺りを見渡すと、部屋の入り口付近の様子を窺っている、Mとは別の見慣れた男の姿が目についた。

部屋の入り口を見て考え事をしている男性
※イメージ画像/pixabay.com

気が付いたか?

視線を感じたのか、男が振り返った。

ねぇ、ここ何処?

院内のサロン。処置室のベッドが空いてないんだってさ。

私…どうかしちゃったの?

覚えてないのか…
俺が外科病棟の廊下を歩いてたら、お前が病室から飛び出してきたんだよ。んで、声を掛けたら俺に飛びついてきて、そのまま気絶しちまった。

その声は怒りが含んだような、ぶっきらぼうな調子だった。

ねぇ、怒ってる?

んまぁ、ちょっとイラッとしてる。

ごめん…

俺がイラッとしてるのは、お前が飛び出してきた部屋に入院している如何にもパっとしなさそうな男。お前が運ばれた時から、ずーっとコッチを覗いてる。

男が顎で指した入り口に目をやると、ドアの磨りガラス越しに男性の姿が見え、その輪郭からMだということが分かった。

M…そこで見守っててくれたんだ…

チッ…気に入らねぇな…お前、今、あの男のことを考えただろ?
あの男ってお前の何?

何って…同じ会社の人…

男の左指が私の顎を掴む。苛立ちを隠さない男の鋭い視線に心の中を見透かされそうで、私は逃げるように顔を背けた。

ちゃんと俺の目を見て答えろよ。それだけじゃないだろ?

男が右手を私の頬に当て正面を向かせた。誤魔化しは許さないというように男の視線が私の目を捉える。

この男には隠し通せない、そう思った私は軽蔑される覚悟で、Mとの経緯を話した。

そういう話は聞きたくなかったな… まぁ、聞いた俺も俺だけど。

男は大きくため息を吐いた後、私の肩に繋がるように両手を置きガクッとうなだれた。

ん。ごめんね。

謝る相手は俺じゃないだろ。お前、何やってんだよ…

ホント、自分でも何やってんだろ…って思ってる…

お前、ガードが緩すぎなんだよ。あんなヤツに付け込まれちまうなんて…
いいようにされてるだけって気付かないのか?

男の肩がピクピクと震え、発した言葉は悲痛な叫びのように聞こえた。

Mは、そんな人じゃないよ。

セミナーの時に最後までヤらなかったからか?

返事をする代わりに頷いた。

分かってねぇなぁ。ああいうセミナーには「受講期間中に肉体関係を持つな」っていう暗黙のルールがあんだよ。アイツはそれを知ってたんだろうな。セミナー期間中は、それだけ気分がハイになって、のめり込み易いってこと。現に、お前だってアイツにキスしただけじゃなくて、アイツのを触ったりしたんだろ?

男は体勢を立て直し、ベッド脇の椅子に腰掛けた。

確かに、あの時は場の雰囲気に流されて冷静さを欠いてたって思ってる。でも、Mは私の気持ちを考えて、踏みとどまってくれてる。

じゃあ、よく思い出してみろ。セミナーの後、アイツは一切手を出してこなかったか?

それは…

Mにされたことを思い出し、身体がカーッと熱くなった。

そういう顔すんなよ。

ふいっと顔を逸らす男。

そういう顔って、どんな顔よ。

男の両頬を手で挟み、強引に正面を向かせる。

目がうるうるして、薄っすらと口が空いてて、ちょっとほっぺたが赤くなってて、つまり、なんつーか、その…

途中で言葉を打ち切り、男は咳払いをした。

その、何?

俺にまで、そういう顔を見せるくらいだから、とにかく、お前はガードが緩いんだよ。

そんな尻軽女みたいに言わないでよ。

軽いんじゃなくて隙だらけだって言ってんだよ。そんな状態だと、俺に押し倒されたとしても、あっさりヤられちまうぞ。

そんなワケないじゃん。

どうだかな。試してみるか?

私の後頭部をガシっと押さえ、ニヤリと男が笑った。

いくらなんでも、この男とだけは有り得ない行為・・・

ちょっと待って!
ねぇ、冗談よね?

さあな。

私の意に反して、男は顔を近付けてきた。


今回はこの辺で・・・

お読みくださり、ありがとうございます。
にほんブログ村 その他日記ブログ 自己満足へ 人気ブログランキング

PVアクセスランキング にほんブログ村

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply