Love Buddy 呪縛との対峙

神谷 幸弥(さや)

2019-03-02
恋愛ヒストリア
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Mが女性に向かって言った言葉を、しばらく反芻していた。

O型の子ども・・・

彼の血液型はAB型であり、O型の子どもが産まれてくることは有り得ない。

奥さんが浮気していた?

夫婦間のことに深く立ち入ることが出来ず、目の前で互いに背を向け合っている2人の様子を傍観しているしかなかった。

背中合わせで対立している男女
※イメージ画像/ぱくたそ(www.pakutaso.com)モデル:大川竜弥|たけべともこ

「言ってる意味が分からないわ」

アンタが欲しかったのは、夫じゃなくて子どもの父親だったってこと。それが目的で俺に近付いてきたんだろ?

「アナタの子どもが欲しかったからよ」

違うだろ。俺を誘ってきた時には、もう腹の中に他の男の子どもがいたんだろ?

「何を言ってるの? あの子はアナタの子どもよ?」

そう信じたかったさ。だから、アンタから妊娠したって聞いた時は、籍を入れて産まれてきた子どもの認知もした。けど、ヤッた日から産まれてきた日までの計算が合わなかった。

「あの子は早産だったのよ」

今さら嘘吐くなよ。俺だって母子手帳くらい見るさ。大体、アンタとヤッたのは1回きり。それに、ちゃんとゴムを着けて外に出した。どう考えたって俺の子どもっていうのは可怪しいだろ。

事の顛末が分かった気がした。

「この娘の前だからといってデタラメ言わないでよ。責任逃れもいい加減にして」

2人の話を聞いているうちに、やるせなくなった。

Mの気持ちが奥さんから離れていることは、今までの彼の態度から分かりきっている。
けど、奥さんの気持ちは?
妊娠したことに気付いてなかったのかもしれないし、本当にMのことが好きだったのかもしれない…

子どものことは別にして、何でMだったんですか?

「何が聞きたいのかしら?」

何でMを人生の伴侶に選んだんですか?
さっき、Mのことを木偶の坊だって言ってたじゃないですか。

「そうね。浪費家でもないし、遊び癖もないし、浮気の心配も無さそうだって思ったからよ。ぱっとしない男でも稼いでくれさえすれば誰でも良かったのよ」

言い放たれた言葉にはMへの思慕の念は感じられず、Mを目の前にして、ぬけぬけと言う彼女に腹が立った。

誰でも良かっただなんて…
Mの気持ちを考えなかったんですか?

「感謝されても良いくらいよ。もし私と結婚してなかったら、この人、一生独身のままよ。こんな冴えない男と誰も結婚しようだなんてと思わないわ」

酷い…あんまりです…。
それじゃ、Mが…

色々な感情が喉元にせり上がってきて、それ以上言葉を紡ぐことが出来なかった。

「何も泣くことないでしょ。貴女のことを言ってるんじゃないんだから」

え…? 私…泣いてる…の?

目の縁に手を当ててみると指先が濡れた。手でゴシゴシと目を擦り深呼吸してギュっと唇を噛み俯いた。

ユキ?

彼の手が肩に触れ、頭を優しく撫でた。とたんに、堰を切ったように涙がぽろぽろと瞼から零れ落ちた。

いつから、こんなに泣き虫になっちゃったんだろ…。

「ちょっと止めてよね。まるで私が虐めてるみたいじゃない」

ユキはこういう女なんだよ。いつも負けん気出して踏んばって、自分のことは何を言われても泣き喚いたりしないけど、俺のことになると自分のことのように怒るし泣くんだよ。だから、俺はユキのそういう気持ちに応えてやりたい。

「アナタ、この娘の情に絆されたのね」

最初はそうだったかもしれない。けど、今は、側に居て欲しいし居たいと思う、ただ一人の女なんだよ。

「やっぱり女狐ね。その娘」

違うって言ってるだろ。ユキと俺はまだ一線を越えてない。ユキはアンタのことを気遣って俺を受け入れるのを躊躇ってる。

「プラトニックだから許されるって思ったら大間違いよ。人をバカにするのも大概にして頂戴」

バカにしているのは、他の男の子どもを産んだアンタのほうだろ。俺がAB型だってことも知らずにのO型の子どもを産んだんだからな。それとも、AB型からO型の子どもが産まれないって知らなかったのか?
それ以前に、誰の子どもかも分からないのに平気で産んだアンタを信用出来ないんだよ。

「アナタがどう思おうと知ったこっちゃないわ。籍を入れた以上は責任を取って貰わないと。それから、貴女に言わせてもらうけど、この男を好きになったのは結婚してて安全だと思ったからでしょ。もし独身だったら見向きもしなかったんじゃないの?」

穿った言い様に、返す言葉が見つからなかった。

男の部分を前面に出されてたら、私は拒絶反応を示していた。Mに気を許したのは、彼が既婚者だからだったからなのかもしれない。彼女の言ったことを否定出来ない自分がいる。けど、同じ既婚者の親分に対しては警戒心を持っている。

どうなんだろ… 自分でも分からない…。

確かなのは、誰に責められようと、私の中で彼の存在がどんどん大きくなってきていることだけ。

ごめんね…M…。でも…貴方が好き…。
頭の中がぐちゃぐちゃとして遠ざかる意識の中、そう私は呟いていたらしい。


今回はこの辺で…


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