Love Buddy 不穏な気配

2019年02月06日
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恋愛ヒストリア
一般病室とは違う観察室の中に入り浸っているわけにもいかず外に出ようとドアに向かった。

出ていく前にストッキングを脱いてけ。

ストッキング?何で?
まさか、匂いを嗅ぐんじゃないよね?

人を変態扱いするのもいい加減にしろ。

だって変態じゃん。トイレでのこともあるし…。
ん? ちょっと待って…Mには人の心を読み取る不思議な力でもあるのかしら?

あのなぁ…んなワケねぇだろ。
お前が分かりやすいだけだよ。
トイレでのことは、まぁ、そのアレだ。
大なり小なり男にはそういう所があるんだよ。

一瞬、自分勝手な物言いだと呆れたものの、別れた夫にも行為の最中を見せて欲しいと懇願されたことを思い出し、あながち嘘でもないのではないかと妙に納得した。

匂いを嗅ぐ為じゃないとしたら、何でストッキングを脱ぐ必要が?

よく見ろよ。血が付いてる。

言われて自分の足に目を向けると、膝から下が赤茶色く変色していた。

ごめんな。俺ので汚しちまって…

良いよ。Mが悪いんじゃないんだから。
ちよっと向こうを向いてて?

は? 今更だろ。
お前の下着姿とっくに見てるし。
それに、その下も…あ…

決まりが悪そうに彼が視線をそらした隙に、手早くスカートをたくし上げストッキングを脱ぎ丸めた。ホテルでのあの時に触られただけではなく、視姦されてたのかと思うと羞恥心と悔しさがこみ上げ、丸めたストッキングを彼の顔めがけて投げ付けた。

Mのバカっ! もう、帰る!

唖然とする彼を尻目に観察室から出て、ナースステーションの前で会釈をし病院をあとにした。あたふたする数名のナースの様子から、一部始終を見られていたのだと察した。


タクシーを使って会社に戻った時には、終業時刻間際になっており、事務所では社労士と社長、お局様の3人で打ち合わせが行われていた。おそらくMの件で話し合っていたのだろう。

声を掛けずに退社しようとしたが、お局様に呼び止められた。
「神谷さんお疲れ様。悪いんだけど休憩室の掃除をしといてくれる?貴女しか頼める人がいないのよ」

承知の旨を返し休憩室に行き、おびただしい量の赤い液体が広がった状態になったままの床を見て、掃除しようとする人はいなかったのかと呆れた。と同時に、Mの身体から流れ出たものだと思うと、放置されていたことに優越感にも似た感情が湧き上がってきた。

よく輸血をせずに済んだものだと感心しながら床を眺めていた時、キャップが外れて中身がほとんど無くなっているアセロラジュースのペットボトルがMの倒れていた付近に転がっていることに気が付いた。

ペットボトルの容器は500ml。床に広がっていたのはMの血だけではなかったのだと気付き、拍子抜けして全身の力が抜けそうになった。

掃除をし終わり帰ろうとした時、Mの怪我の原因となったガラスコップを落とした女性社員が休憩室に入ってきた。

目前に立ちはだかるスーツ姿の女性
※イメージ画像/ぱくたそ(www.pakutaso.com)photo:すしぱく

「神谷さんが掃除したんだ。よく平気でいられるわね。図太いのかしら」
棘のある言い方に、ある疑念が浮かぶ。

何か用?

「Kさんと、神谷さんって、どういう関係?」
確信へと変わる疑念。

Mと私は唯一無二の相棒よ。

「ふーん。恋人同士じゃないんだ。じゃあ、私とKさんが付き合っても文句ないよね?」

付き合うって…
Mには奥さんが…

「へーぇ、知らないんだ。相棒だとか特別な関係みたいに言ってるけど、その程度の仲ってことね。これからはKさんに近付かないでね。私達が付き合うようになったら邪魔だから」

そういうことは、貴女1人で決めるもんじゃないでしょ。
Mの気持ちだってあるし…

「だ〜か〜ら、神谷さんが邪魔だって言ってるの。私が告白しても神谷さんが側に居たんじゃ、Kさんと付き合えないでしょ?」

ここで議論しててもしょうがないでしょ。
全てはMの判断次第よ。

Mと距離をおいていた間に彼が女性社員と何を話していたのか分からず一抹の不安がよぎったものの、悟られたくなくて冷静さを装った。

「あっ、そ。じゃ、明日早速お願いしようかな」

告白でも何でもお好きにどうぞ。
私にそれを止める権利は無いから。

一方的な物言いに辟易し、その場を離れ男性用ロッカールームに向かった。

「ちょっと、待ちなさいよ。話はまだ…」

もう話し合う必要は無いでしょ。

お互いに交換していたスペアキーでMのロッカーの鍵を開け、中から彼の荷物を取り出し駐車場へ急いだ。運転席に乗り込みエンジンを掛け自宅へと車を走らせた。途中で女性社員が後を追って来ていることに気付き急遽Mの家に向かった。

追尾されたままMの家に到着し、逃げ込むように中に入り鍵を掛けた。

どうしよう…
あれじゃ、まるでストーカーだよ。
Mに相談したほうが良いかな…?
ダメダメ…Mに余計な心配を掛けるわけにはいかない。

外を確かめる勇気もなく、その夜はMの家に泊まることにした。家の中を探し回り、病院へ持っていくMの着替え等をまとめた後、夕食代わりに買い置きしてあったカップ麺を勝手に食べた。

今まで男の人の家に泊まったのは、後にも先にもMの家だけだった。まるで探検するように家のあちこちを見回り、あるべきはずの物が無いことに違和感を抱いた。奥さんと子供の気配が何処にも感じられなかったのだ。衣類を始め、持ち物や写真といった物が一切無く、あたかも最初から存在しなかったかのように思えた。

家族写真が飾られているはずの写真立てには、研修に行った時に撮ったMと私のツーショットが収まっていた。

女性社員の言っていた言葉が引っ掛かる…
Mの身の回りに私の知らない何かが起きてる…

そう感じたものの、追求しようとはしなかった。真実を知ろうとはしなかった。否、してはいけないと思い込んでいた。

彼から送られ続けていたシグナルに気付かなかった…。


今回はこの辺で…

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神谷 幸弥(さや)
Posted by 神谷 幸弥(さや)
頑張らない人生を生きる現実思考の楽観主義者。
歯に衣着せぬ性分。B型。
三大モットー【本気・根気・能天気】
視覚異常を抱えた福祉手帳所持者。
就労継続支援A型事業所にて勤務。

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