Love Buddy 課せられた試練

神谷 幸弥(さや)

2019-01-20
恋愛ヒストリア
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胸元の痣が薄くなっていくにつれ、Mを男として意識することもなくなってきた。否、しなくなるだろうと思っていた。が、滅多に会う機会のない相手ならともかく、毎日のように顔を突き合わせている相手を意識しないはずが無かった。

全ての研修が終わり課題から解放されても、Mは何かと私を遊びに連れ出していた。仕事とも無関係の完全なプライベートな時間でも、Mと行動を共にすることが多くなっていた。

★最終研修から約1ヶ月が過ぎた頃

会社での朝礼後、Mが意を決したように口を開いた。

社長、それと皆さん。
ちょっと俺の話を聞いてもらえますか?

何事かと周囲がざわついた。

前に、こいつ、あ、いや、神谷さんに言われてから考えてたんですけど…

隣にいた私の両肩に手を置き自分の前に立たせるM。
周囲の視線がMから私に移った。

うちの職場って、他の人の仕事量とか納期とか把握してないですよね。っていうか、俺ら全員、会社で請け負った仕事の量や納期自体を知らされてないじゃないですか。それって効率が悪くないですか?

両肩に乗ったままのMの手が微かに震えていた。彼の緊張感が伝わってきた。おそらく、人前で自分の意見を主張することが無かったのだろう。

やっぱ、全員が知っておいたほうが良いと思うんですよ。全体の分と個人の分を把握していたら、協力もスムーズに出来て効率が上がるんじゃないんですか?

互いに顔を見合わせて頷く職場の人達。

だから、事務方だけで情報を抱えてないで、予定表として掲示して欲しいんですよ。


お局様とアイコンタクトをとった後、社長は「分かった」と、Mの申し出を承諾した。

朝礼が終わり民が各々の持ち場に向かった時、Mは背後から私を抱きすくめた。

だはーっ…
すんげぇ緊張した。

お疲れ様。
M、カッコ良かったよ。

そうかぁ?

より強く私を引き寄せるM。

ねぇ、そろそろ仕事しよ?

もうちょっと、このままで…

されるがままにしていると、腰に当たっている彼のモノが膨らみ始めた。

ちょ…Mったら…
アレが当たってる…

やべっ…
お前の匂い嗅いでたら、つい…

もう…Mの節操なし…

これでも辛抱してんだぞ。
お前にお預けくらったまんまだけどな。

コソコソ話していた時に、社長の咳払いが聞こえ慌てて離れた。

社長:「あー、付き合うのは自由だが、社内では慎むように」

いやいや、付き合ってないから。

すんません。自重します。

何、認めちゃってんのよ…。

社長:「ふむ。ところでK君、もし、2人が式を挙げることになったら早目に言ってくれ」

え…式って…?

いやぁ、それは無いっすよ。
こいつ、そういうのに憧れてないようなんで。

社長:「じゃあ籍だけかね。もう予定は決まってるのかな?」

ねぇ…何の話?

それも分からないっす。
俺のほうは全然問題ないんですけどねぇ…
こいつの気持ちがまだ…

私のことを言ってるみたいだけど、全然、話が見えない…。

社長:「例の手続きが済んでるってことを、神谷君に話してあるのかね」

いや、そのことは話してないっす。
こいつには、そういうことを抜きにして考えてもらいたいんで。


社長:「ふむ。そりゃK君も大変だ。さ、仕事に取り掛かってくれ」

会話の内容が飲み込めず、ワハハと笑いながら立ち去っていく社長と、苦笑しているMを交互に見ながら、しばらく首を傾げていた。

予定表が掲示されて以降、てきぱきと仕事を熟すようになったMは注意されることも無くなり、社長に進言したことで蟠りが晴れたのか現場でのウケも良くなっていた。

仕事が出来る男性社員が、女性社員から好意を持たれるのは世の常。Mも例外ではなく、休憩時間になると彼の周りに女性社員が集まり、今まで私がいた場所は彼女達に占領されていった。その様子を遠目に見て何故か胸がチクリと痛んだ。

Mが社長に叱られることも無くなったし、皆から笑い者にされることも無くなったし、私の役目は終わっちゃったかなぁ…。

気が緩むと涙が滲み出そうになり、それをMに知られたくなくて、次第に、彼と顔を合わせることを避けるようになっていった。

★研修修了から3ヶ月後

お昼の休憩時間にMとの話に夢中になっていたのか、女性社員がガラスコップをテーブルから落とした。クッション性の無い固い床に落ちたガラスコップは、無残に砕け散り破片がMの下腿に突き刺さり、Mは椅子から転げ落ちるように床に倒れた。

苦痛で床に倒れる男性
※イメージ画像/ぱくたそ(www.pakutaso.com)モデル:大川竜弥

足に手を当てうめき声を漏らす彼の下腿から血液が噴き出し、女性社員達がMの周りでキャーキャー悲鳴を上げた。

M!

女性社員を掻き分けMの側にいき、ポケットに入れていた予備のハンカチーフで傷口を抑えた。

誰か救急車を呼んで!

ユキ…お前の顔見るの久しぶり…

まるでドラマの殺人現場のように、辺り一面は見る見るうちに血で染まっていき、失血でMは朦朧としていった。

ねぇM! しっかりしてよ!

救急車が到着するまでの時間がひどく長く感じた。

俺…もう…

救急車に乗せられた時、とうとうMは意識を失い顔は血の気を失っていた。


嫌だ…嫌だよ…
ねぇM、絶対に目を覚ましてよ。
神様、彼を連れて行かないで…。


救急車に同乗し祈り続けた。


今回はここ迄…

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