ロストバージン

神谷 幸弥(さや)

2019-03-20
交際期間
0 COMMENTS
 キスをされた次の週の土曜日、S男は「見学会」と言って建設されたばかりのホテルに連れて行った。魂胆は見え見えで、逃げようと思えば逃げることも出来たが、逃げるのは癪というか敗北感に似たような感じがして留まった。

自分でホテルに連れてきたにもかかわらず、S男は部屋に入ると立ち尽くしていた。

――何しにきたのよ……
ぼーっとしてんじゃないわよ!

突っ立っているS男を尻目に、さっさとシャワーを済ませベッドに寝転んだ。初めてだというのに緊張感はなく、自分でも驚くほど冷静だった。私の後に続きS男もシャワーを済ませベッドに上がってきた。その裸を見ても「ときめき」なんてものは少しも感じなかった。どちらかといえば、鍛えられた弟の裸を見る時のほうが余程ドキドキ感があったかもしれない。←意味深

 枕元に置かれていたコンドームを手に取り、じっくりと説明書を読んだ後自身のモノに装着する様子を見て、私よりも10歳も年上のS男が未経験者だと察しがついた。暫く私の秘部を探っていた後「何処に挿れれば良いのか分からん」と言った時は流石に呆れた。と、同時に予備知識も無く行為に及んだS男が頼りなく思えた。

S男の手を取り秘部へ導くと、何の刺激も与えられず充分にほぐれていない私の中にS男のモノが侵入してきた。切り裂かれるような痛みが身体を突き抜け「痛いっ!まだ濡れてないから待って!」叫んでも「ちゃんと濡れてるよ、あんたの此処」触りもせずに答えるS男に返す言葉が出なかった。

 私の身体に覆い被さり、S男がひたすら上下運動を繰り返している間中、私は「痛い、痛い」と連呼していた。やがてS男の動きがピタリと止まり私の中に入っていたS男のモノが萎んでいった。

――終わった……

苦痛の時間から解放され、内心ホッとした。

S男は私の身体から離れ「出なかった」と零した後、背中を向けるようにベッドに腰掛けコンドームを外し自身のモノの後始末をした。ちらっと見えたS男のモノ。見たのは後にも先にも一度切り。父のソレとは違うS男のモノに何故だか違和感みたいなものを持った。

私がベッドから降りた後のシーツを見て「血が付いてない。大人しそうな顔をしてて初めてじゃなかったんだ」責めるように言い放たれ、言い返す気力はなく、 シャワーも浴びずに服を着て身なりを整えるS男を残し、無言で浴室に向かった。

 身体に付いたS男の汗をシャワーで洗い流していた時、「お金が勿体無いから早くしろ」外から急かす声がした。手早くシャワーを済ませ服を着て部屋を出る準備をすると、精算機に表示された金額を見てS男が「高過ぎるっ。この金泥棒め!」怒鳴りながら精算機を叩いていた。

度を越したS男の態度を見て溜め息が出た。「私が出しとく」財布を取り出し精算を済ませた。料金体制はフレックスタイム制で金額は7800円。

 初めて異性と肉体関係を持つ時のことを「男は捨てる。女は失う」と言われているが、私の場合は、捨ててたとか失ったとかではなく、S男の初めてを奪ったのかもしれない。相手が私ではなかったなら、S男とて女性の甘い言葉を聞き、本能の赴くままに湧き上がる欲を放出させることが出来たであろう。

私の初めては、ムードもへったくれもない、虚しさだけが残る結果に終わった。

お読みくださり、ありがとうございます。

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply