Without Love 寂寥感と断ち切れない思い

神谷 幸弥(さや)

2019-05-24
非恋愛期
2 COMMENTS
 アパートで暮らし始めた頃には、枠を越えて仕事をするようになり上役達の目を引き業務内容が増えていった。必然的に会社に留まっている時間が長くなり、アパートに帰る時刻は遅くなった。

S男と退社時刻がズレてきた為、通勤手段として原付バイクを購入した。独自の移動手段を得た私は単独で出掛けることが多くなった。対象的に、S男は元々が出不精なのか、仕事以外で外出することはなかった。

実家とは違い、家族に気を遣う必要がなくなったS男は、暇さえあれば貪るように身体を求めた。一般的な女性なら喜びを感じることだろう。が、私は、身体を重ねる回数が増えるにつれて、S男との距離を感じるようになった。

――これから、ずーっとこんなことが続くんだよね‥‥


 2週間ほど経った頃から、休日になるとS男は避妊せずに私の中に欲を放ち、実家に戻って過ごすことが多くなった。

「また向こうに行くの?」

「あっちのほうが落ち着くから」

「あっそ。だからといって生でシないでよ」
――生でされるとアソコが痛いし、身体がしんどいのよ!

「生でヤらないと安心出来ない」

「何、言ってんの?普通は逆でしょ?入籍の前に出来っちゃったらどうするのよ」

「そのほうが助かる。元々、ユキミを妊娠させるのが目的で結婚するんだから」

「子作りだけが結婚の目的ってこと?」
――私は子作りの道具ってこと?

「そう母さんに言われてる」

――やっぱり、お母さんの言いなりなんだ‥‥


 クリスマス間近の休日‥‥
S男は定番のように、避妊することなく私の中に欲を放ちアパートから出て行った。身体が重だるく、どうしようもない寂寥感に苛まれていた時、私の気持ちを察したかのように弟の悠斗から電話が掛かってきた。

「よ!どんな感じ?新居での生活は」

「‥‥なんだか、疲れちゃった‥‥」

「どした?仕事が忙しいのか?」

「ううん。仕事はそんなに辛くない‥‥けど‥‥」
――S男との行為のことだなんて言えない‥‥

「けど?」

「‥‥上手く、言えない‥‥」

「そっか‥‥。とにかく、疲れてんなら帰ってこいよ」

「うん‥‥帰りたい‥‥でも‥‥ダメだよ」
――本当は、すぐにでも帰って悠斗に会いたいよ‥‥

「もしかして、オッサンに遠慮してんの?」

「違う‥‥そうじゃない‥‥」
――帰ると悠斗に甘えちゃうから‥‥

「意地張ってないで帰ってこいよ。帰り辛いんだったら俺が迎えにいくよ?」

「いいよ。わざわざ迎えに来なくても。どうしても我慢出来なくなったら帰るから」

「本当に?」

「うん‥‥」

「どうだかな。ただでさえお前のことが気になって勉強が捗らないのに、そんなんじゃ、益々手に付かなくなっちまうだろ」

「それって、どういう意味よ」

「んなこと言えるかよ。じゃあな」

――あ、切れちゃった。
何、焦ってたんだろ‥‥?変な悠斗。


 ぷつりと切れた電話から、弟の狼狽えぶりが感じ取れて、受話器を持ちながらクスクスと笑っていた時、宅急便で荷物が届いた。

差出人の欄には弟の名前‥‥

――悠斗から?何だろ?

開いて確かめると、中から見覚えのある大きなウサギのぬいぐるみが出てきた。そのぬいぐるみは、大型レジャーランドのゲームコーナーで弟が私の為に勝ち取ったものだった。

ぬいぐるみにはメッセージが添えられていた。

『少なくとも俺だけは幸弥の味方だってことを忘れるなよ』

――もう‥‥悠斗ったら‥‥
こんなことされちゃったら、ますます甘えたくなっちゃうじゃん‥‥


 弟への思慕の念が募る中、結婚の準備はS男の母親の采配により、上司をも巻き込んで着々と進んでいた。


お読みくださり、ありがとうございます。

Comments 2

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風花(かざはな)  

辛いですね

母親に依存している男性がパートナーだと結構、苦労しますね。
きっと、上手くいかないだろうな?
私もそうだったから、これから、どのように展開するのが、ドキドキしながら読んでます。

2019/05/26 (Sun) 15:10
神谷 幸弥(さや)

神谷 幸弥(さや)  

To 風花(かざはな)さん

風花さん、こんばんは。
依存というか、過保護というか‥‥
かなりキツいものがありました。

2019/05/26 (Sun) 19:20

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