Without Love 知らされていなかった男の過去

神谷 幸弥(さや)

2019-05-04
婚約期間
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 S男の家で暮らし初めてから2ヶ月が経過した頃、S男の母親から、地域で開催される企画に参加するように言い渡された。

【新婚さんいらっしゃい!】という、某番組を真似た企画名を聞き、呆れ果ててしばらく口を利く気がしなかった。

――まだ結婚したわけじゃないんだけど‥‥
てか、何を喋れば良いのよ。

そんな風に思っていた休日の午前中、企画関係者の男性が訪ねてきた。11時を過ぎているというのにS男が起きてくる気配はなく、打ち合わせることは不可能に思えた。

「すみません。今、ちょっと時間が無いんで‥‥」

「あ‥‥そうなんですか。じゃあ、また日を改めてお伺いさせていただきますね。それにしても、今度の奥さんは随分とお若いんですね」

「え‥‥?今度って‥‥?」

「あれ?S男さんって再婚じゃなかったですかね?それも3回目。バツ2でも次が見つかるって、やっぱ、イケメンって違うわ」

聞きたくもないことを一方的に話した後、その男性は帰って行った。

――S男さん‥‥バツ2だったんだ‥‥
全っ然、聞いてないんだけど!

再婚云々のことより、知らされていなかったことに腹が立ち、居ても立っても居られずS男の部屋に向かった。


 部屋の襖戸を開けて中に入ると、S男は眠りこけていた。丸太ん棒のように眠っているS男の上に跨り、パジャマの襟元を掴みぐいっと引っ張り上げた。

「起きてよ!」

「な、何?」

「私って、3人目の奥さんなんだってね」

「前の2人とは入籍してないぞ」

「でも、この家で一緒に暮らしてたんでしょ。普通の夫婦みたいに」

「うん。まぁ」

「やっぱり3人目じゃん」

「何だ、珍しく妬いてるのか?」

「自惚れないで!」

襟元を掴む手に力をこめ、ガクガクと揺さぶった。

「あのねぇ!結婚する相手が初婚の場合と再婚の場合じゃ、心構えが違ってくるの!」

「そんな、大袈裟な‥‥」

「どうしたって、周りの人は前の奥さんと私を比べるでしょ」

「別に気にすることは無いだろ」

「気にする、しないの問題じゃないの!私が知らないのに私のことでアレコレ言われるのが嫌なの!」

「わ、分かった。言わなかった俺が悪かった。それにしても、ユキミさんがこういう人だったとは‥‥」

「こういう人って、どういう人よ」

「もっと健気でお淑やかだと‥‥」

「期待外れで悪かったわね」

「いや、謝ってほしいわけじゃなくて‥‥」

ああでもないこうでもないと言い合ってると、ガバッとS男が起き上がり私を組み敷いた。


 S男は乱暴に私が穿いているスカートを捲り上げ、その下に穿いていたものを下着ごと剥ぎとった。

「口うるさい女だな」

S男も下半身に身に着けていたものを脱ぎ捨てた。

「ちょっ‥‥今はやめて」

「生理だとでも?」

「そうじゃなくて、今、ゴムを切らしてるから」

「籍を入れるんだから生でヤッても良いだろ。でもまぁ、俺は元々子供が出来にくいらしいから、無理に避妊する必要もないだろうけど」

「どういうこと?」

「前の2人とは3年くらい一緒にいたけど、子供は出来なかった」

「きっちり避妊してたか、回数が少なかったからでしょ」

「いや、いつも生だった。俺がゴムを着けてヤッたのもホテルに行ったのもユキミが初めて。それに、母さんから早く子供作れって言われてて、最低でも週3くらいのペースでヤッてた」

――呼び捨てかい‥‥
道理でコンドームの説明書を、あんなにじっくりと‥‥
んん?でも、あの時、挿れる所が分からないって言ってなかった?

「ちゃんと中に挿れてた?」

「何が言いたいんだ?」

「初めての時、何処に挿れたら良いのか分からないって言ってたから」

「それは、自分から挿れたことなかったから」

「どういう意味?」

「向こうが俺のを扱いて自分で挿れてた」

――S男さんって、マグロ男だったんだ‥‥
あ‥‥でも、私との時は逆に私のほうがマグロだわ。

「前の奥さんとは、どうやって知り合ったの?」

「2人とも母さんが連れてきた」

――S男さんって、母親の言いなりなんだ‥‥
先が思いやられる‥‥

「見たことも話したこともない女の人相手に、よく平気で出来たわね」

「昔って、それが普通だっただろ。それに、扱かれたら出来たし‥‥」

――何時の時代よ‥‥

「あ‥‥でも、ユキミの場合は違うな」

「何が?」

「よく分からんが、初めて見た時、股ぐらがムクムクってなった。で、ずっとチャンスを狙ってた」

「調子の良いこと言っちゃって‥‥」

「いや、本当だから。T男もFも同じこと言ってたから、先越されるんじゃないかって焦ってた」

――そういえば、2人に誘われたことある‥‥

「もしかして、S男さん、私に惚れてる?‥‥とか?」

――そんなワケないわね‥‥

「男がそういうこと軽々しく言うわけないだろ」

しどろもどろに言うS男の姿を見て至極愉快な気持ちになり、私は花弁の中の奥深くにある蜜壺の中にS男のモノから迸る欲を受け入れた。その時、痺れるような痛みを全身に感じた。



この時はまだ、S男との間に越えられない壁が潜んでいることに気付かなかった。

お読みくださり、ありがとうございます。

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