Without Love 現れた男の本性

神谷 幸弥(さや)

2019-04-07
交際期間
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 特別な好意がない状態でも関係を続ける……
S男に言われて「はけ口にされてなきゃ良いけど」弟の言葉が脳裏をよぎった。

「好きじゃなかったら関係を続ける意味ないでしょ。それとも他に何か理由でもある?」

「気持ち良いから。あんただって同じだろ。最近挿れやすくなってる」

前段階を踏まず強引に進めるS男の一方的な行為は、快楽をもたらすことはなかったものの、不感症だと嘲笑されることが耐えられず、前もってトイレでジェル等を使い、自身に自ら刺激を与えるようにしていた。

――人の気も知らないで……同じじゃないわよ!
でも、言って通じるような人じゃないわね……

「それだけが目的だなんて虚しいじゃない。気持ち良い思いをしたけりゃ風俗にでも行けば?」

「金が勿体ない。あんただったら……」

ホテル代は交互に支払っており、無頓着なS男の代わりに避妊用品は私が準備していた。S男が出した金額は、世間一般の男性が肉体関係を持った相手に対して負担する金銭の平均以下だと思われた。

「私だったら、あまりお金を使わなくてもヤれるって言いたいの?」

「実際、そうだろ」

――何で、そんなに好きでもないのに、こんな守銭奴みたいな男の相手をしてるんだろ……バカみたい……


 親睦会等がない職場だった為に職務態度以外でS男の人となりを見極める術はなく、そつなく仕事をこなすS男に私は少なからず信頼を寄せていた。S男の本性を知り落胆したことで、ようやく信頼の情が身体を許した動機だったのだと悟った。

人を見る目がなかったのだと自分に言い聞かせても、悔しさや腹立たしさが込み上げてくる……

「女の身体をお金で判断するなんて、アンタって、本当にサイテーっ!」

「サヤ!ちょ、ストーップ!」

気が付けば手を振り上げ、S男に平手打ちを食らわす構えをしていた。が、手首を弟にガシッと掴まれ、平手打ちを見舞うことは叶わなかった。

「引っ叩くと、お前の手も痛くなっちまうぞ。それだけの価値があんの?」

「それを言うなら、価値じゃなくて覚悟でしょ」

「覚悟じゃねぇよ。この人に痛い思いをしてまで引っ叩く価値があんの?ってこと」

「少なくとも私の気持ちが……」

「引っ叩いたくらいじゃ収まらねぇだろ。余計にむかっ腹が立つんじゃねぇの?」

「うううぅっ……」

「あ~あ、泣くな」

「泣いてない……もん……」

「嘘つけ。鼻水が出てる」

「え……?」

慌てて鼻の下に手を当てて確かめると、湿り気はなく乾いていた。

――悠斗に騙された……

ムッとして弟の顔を見ると、険しい表情でS男を見つめていた。

「あのさ、オッサン。さっきコイツに言ってたのってマジ?」

「俺、金がかかることは嫌いだから。何かと言うと、やれ食事に連れてけ、やれショッピングに連れてけ、やれ遊びに連れてけ、って、金がかかることしか言わない女が多いのに、ユキミさんは違うから」

「そういうの付き合ってたら普通じゃん。オッサンさぁ、コイツと付き合ってて、いつも何処に言ってたワケ?」

「何処って、ホテル」

「マジか。デートが毎回ホテルって、まるでトイレ扱いだな。名前も覚えようとしないし、コイツがキレるのも無理ねーわ」

「君だって同じなんじゃないのか。もしかしてユキミさんの初めての相手って君か?」

「オッサン、マジでそう思ってんの?」

「ユキミさんの様子を見てると、そうだとしか思えない」

「おーい、サヤ。このオッサンが言うには、俺がお前の初Hの相手だってさ。まぁ、まんざら嘘でもねぇよな?」

――え?否定しないの?
てか、何で弟だって言わないの?

「S男さん、ユウは私のお……うぐっ……」

変な勘ぐりを避ける為にS男に言おうとしたら、弟の手が口を塞いだ。

――ちょっと悠斗……

「さっき、誤解されても良いって言ったよな?このまま誤解されてたほうが別れ易いだろ?」

耳元で囁く弟の言葉が、天使の救いにも悪魔の誘惑にも聞こえた。S男に対する腹いせ的な思いも手伝い、私は疑念を晴らすことをしなかった。

S男の策略に拍車をかけるとは知らずに……

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